憲法がどのように変えられようとしているのか、自民党が3月に出した「改憲4項目」から明らかにしていきたいと思います。

▶「戦争放棄」を無効化

「前条の規定は、…を妨げず」との文言で、憲法9条に規定されている「戦争放棄・戦力の不保持・交戦権の否認」が無効にされてしまいます。

▶武力行使に際限なし

「必要な自衛の措置」に限定がないことから、「集団的自衛権」を含む自衛隊の武力行使が際限なく拡大します。

▶海外派兵も自由?

「国民の安全を保つため」として、「在外法人の保護・救出」を名目とした自衛隊の海外派兵が正当化されます。
戦争は「自衛」を名目として行われてきました。

「自然」を消したトリック

「大地震その他の異常かつ大規模な災害」と聞くと、大規模な自然災害を思い浮かべる人がほとんどだと思いますが、じつは「自然」という言葉を意図的に消したトリックです。有事法である国民保護法には「武力攻撃災害」という概念が既定されており、法律上「災害」は「自然災害」だけを意味しません。2012 年の自民党新憲法草案では「我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他」と書いています。

▶憲法停止の独裁体制

「緊急事態」条項新設案は、内閣だけで法律と同等の効力を持つ「政令」を制定できるようにするもので、明治憲法の緊急勅令と同じ内容です。
目的は憲法を停止し、戦争や政府に反対する言論、集会やデモ、ストライキを禁止することです。「ナチスの手口を学んだらどうかね」(麻生副総理、2013年)が本音です。

「道州制導入」のための「合区解消」

この部分は実は「12年自民党憲法草案」の内容がほぼそのまま適用されています。12年草案のなかには「広域地方自治体」という概念があります。これについて草案Q&Aは「道州はこの草案の広域地方自治体に当たり・・・立法措置による道州制の導入は可能」と答えています。つまり、これは「1票の格差」問題を口実とした「道州制導入」の条項―新自由主義を経済の基本とする国家体制への転換です。

「教育無償化」の条件

*学生側の条件
・国立大学の場合、住民税非課税世帯(年収270万円未満)の場合は授業料等が全額免除、300万円未満の場合は2/3を支援、380万円未満の場合は1/3を支援。私立大学・公立大学の場合も、国立大学に準ずる形で一定の支援。
・レポートの提出や面談により本人の学習意欲を確認
・大学等への進学後については、公費で費用がまかなわれることに留意し、単位取得が少ないときや成績が下位のときは学生に対して警告を行い、警告を連続で受けた時は支給を打ち切るなどの対処。

*大学側の条件
学生だけではなく、大学側も以下の条件を満たす必要もある。
・卒業必要単位数の1割以上の単位を「実務経験のある教員」担当とすること。
・大学の経営に外部人材が一層参画できるよう、理事に産業界等の外部人材を複数任命すること。
 ※当初は「2割超」という具体的数値も出たが、大学側の反発で数値は撤回
・授業計画の作成や学生の評価の客観的指標を設定するなど、適正な成績管理を実施・公表すること。
・定員充足や進学・就職の状況といった教育活動の状況を含め、財務情報や経営情報を公開すること。

 

改憲における「教育無償化」は教育の機会均等を口実とした罠

今回の教育無償化政策において特に目を引くのは、「産業界との連携がない大学は、学生が条件を満たしていても、無償化の対象外」ということです。学費支援というところをも使って大学改革を強制しようとしていると考えるべきです。引き起こされる矛盾、学問的意義の喪失を引き受けることになるのは学生です。